日本を支える「ワイン大学」が造る大学ワイン登場。ワインを研究している山梨大学だからこそ実現したワイナリーとの夢のタッグワイン!

近年、日本のワイン評価が世界レベルに到達する勢いで上がっています。
その背景には、醸造家の努力はもちろんのこと、研究機関の努力もあります。
みなさんは、ワインの研究機関をご存知ですか?
今回は、日本で唯一のワインを専門とした教育・研究機関である、『山梨大学ワイン科学研究センター』を紹介したいと思います。山梨大学科学研究センターは、山梨大学の大学院に位置する研究機関です。
では、一体どんな研究機関なのでしょうか、説明をするとともに山梨大学が山梨県のワイナリーと手を組み、共同で造ったコラボレーションワインも紹介したいと思います。

山梨大学ワイン科学研究センターとは!?

山梨大学ワイン科学研究センターとは、山梨大学の大学院に位置する研究機関になります。
遡ること、昭和22年(1947年)。当時の名前は、『醗酵研究所』として誕生。
山梨県の特産葡萄を原料とした葡萄酒の改良、並びに葡萄酒以外の果実酒全般の研究および関係各種酒類の研究を進め、優良品を海外輸出に発展させ、日本の復興の一助とすることを目的として設立されました。たしかに、この時代は戦争が活発だった時代、それゆえワインの品質が優先されていたのではなく、酒石酸目当ての量を重視されていました。だからこそ、戦後はワインの品質に、という想いから設立にいたったのではないでしょうか。
そして少し興味深いのは、山梨大学の創立よりも山梨大学ワイン科学研究センターの方が創立は早かったことです。
平成12年(2000年)になり、『醗酵研究所』を廃止し、ワイン科学研究センターが新設されました。この背景には、日本のワイン品質や評価の向上があります。そのおかげで、現在は世界的視野に立ち、先端的な細胞工学、あるいは遺伝子工学技術を駆使した基盤研究から最新の葡萄栽培並びにワイン醸造の実用研究までを包括する研究センターになっています。

  • 施設名
    山梨大学ワイン科学研究センター
  • 住所
    〒400-0005 山梨県甲府市北新1丁目13-1

ワイン科学とは!?

ワインの品質には、原料である葡萄の栽培、醸造、貯蔵・熟成、流通までの全ての段階が大きく関わっています。
葡萄栽培学とワイン製造学と呼ばれる学問が発達し、これらのワインに関係した学問の総称を「ワイン科学」と呼んでいます。
ワイン産業が盛んなフランス、イタリア、アメリカ、オーストラリア等では、「ワイン科学学部」や「ワイン科学学科」も設立されており、世界中で活発な教育・研究活動が行われている分野になっています。

研究内容

では一体どんな研究をしているのでしょうか。
現在は、

  • 発酵微生物工学研究
  • 機能成分学研究
  • 果実遺伝子工学研究

を中心に研究をしています。

発酵微生物工学研究とは!?

ワイン発酵工程の主役である酵母は、ワインを高める重要な働きを担っています。そして乳酸菌は、ヨーグルトなどの乳製品、アルコール飲料、調味料などの多くの発酵食品との関わりが深く、これらの味わいを高める重要な役割を果たしています。そこで、発酵微生物工学研究では、有用な酵母や乳酸菌の検索とその応用に関する研究をもとに、ワインをはじめとするさまざまな飲料や食品の新たな価値創造を目的に研究をしています。

  • 海洋酵母ワインの開発と有用ワイン酵母の検索
    海から分離した酵母により、世界初の海洋酵母ワインの開発に成功しました。
    従来のワイン酵母を使ったワインに比べて、酸味が豊かで、バラの花のような香気成分が多く含まれる新たな味わいのワインになっています。
    このように、ワイン醸造環境以外に生息する酵母は、従来のワイン酵母にはない有用な特徴を備えている可能性があります。
    そこで、自然界、とりわけ、花や湖から酵母を分離し、その分類学的、生化学的あるいは醸造学的な特徴を明らかにして、ブドウ品種や醸造方法ごとに最も適した酵母を選抜する研究を行っています。
  • マロラクティック発酵乳酸菌の検索
    ある種の乳酸菌は、ワイン醸造工程においてリンゴ酸を乳酸に変換する重要な働きを行っています。これをマロラクティック発酵と呼びます。
    ワインの味わいをまろやかにするとともに、ワインに微生物安定性や香りの複雑さを与えます。
    しかし、マロラクティック発酵は、ワインのpH、温度、アルコール濃度などの様々な要因に影響されるために安定的に行うことが非常に困難です。
    そこで、低pH、低温、高アルコール濃度などの発酵条件ごとに適した乳酸菌を検索し、そのワイン醸造上の性質を調べて安定的にマロラクティック発酵を行えるように研究をしています。
  • 機能成分学研究とは!?

    ワインに含まれる成分のうち、食品科学の感覚嗜好性を中心とする第2次機能と生理調整を中心とする第3次機能に関する成分の解析をしています。
    これらの成分を通して、ワインの品質が向上し、美味しいワインが飲めることを目標に研究をしています。

  • ワインの「第2次機能」
    ・「色」へのアプローチ
    赤ワインは熟成中に赤色から赤褐色へと色調変化を起こします。これは葡萄果皮由来のアントシアニンと発酵・熟成中に生成する色素重合体が大きく関わっていることがわかっています。これらの成分の構造変化を明らかにすることで、ワインの色調の安定化や熟成度の測定指標を目指しています。
    ・「香り」へのアプローチ
    ワインに含まれるエステル化合物はワインの香りの形成に大きく影響を及ぼしています。そして、ワインの製造時に添加する酵素剤がエステル化合物を生成することを明らかにしてきました。そこで、このエステル生成反応を明らかにし、ワインの香りを形成する新しい方法を探索しています。
    ・「味」へのアプローチ
    ワイン中には比較的多量の高分子化合物が存在しています。これらの高分子は、通常明確な呈味はもちませんがポリフェノールがもつ「苦味」や「収斂味」を軽減し、ワインに粘性・コク・厚みを与えることが分かってきました。これらの高分子化合物の特性についてさらに研究を進めています。
  • ワインの「第3次機能」
    赤ワインに含まれるいくつかのポリフェノールが老化関連疾患や生活習慣病の予防に寄与することがわかってきています。
    しかしながら、葡萄の中には数百~数千種類あり、その働きが知られていないものが多くあります。そこで、山梨大学医学部との医工融合によるプロジェクトとして、葡萄に含まれる老化抑制物質を探索し、その効果を検証しています。
  • 果実遺伝子工学研究とは!?

    『高品質なワイン製造に向けて、醸造用ブドウを丸裸にするべし』を掲げ、研究に取り組んでいます。
    具体的には、『植物生理学』と『植物病理学』です。

  • 「植物生理学」
    「甲州葡萄」は日本で商業栽培されている唯一の在来葡萄品種で、ヨーロッパ系醸造用ブドウの血を引いています。
    しかし、白ワイン用原料として重要な「甲州葡萄」は、ワインにすると目立った個性が少なく、フラットな味わいになりがちという弱点があります。
    ただ、科学的解析に基づく「甲州」の包括的な成分分析データがないため、どのような葡萄由来成分を増加/減少させればよいのかさえ明確にできていません。
    そこで、果実遺伝子工学研究では、甲州ワインの高品質化を実現するために、甲州葡萄の全ゲノムを解読し、ヨーロッパ系醸造用品種との比較を行い、甲州葡萄の遺伝的特徴、生理的特徴並びに成分代謝的特徴を顕在化しようと研究しています。
  • 「植物病理学」
    ワイン用葡萄品種は、一般的にカビやウィルスなどの病原菌に対して非常に弱いと言われています。そのため>果実遺伝子工学研究は、耐病性葡萄の分子育種を目指しています。その基盤となる基礎研究として、病原菌の葡萄感染とそれに対する葡萄の生体防御機構を遺伝子レベル、タンパク質レベルで解析しています。
  • コラボレーションワイン公開

    そして、山梨大学では、ワイン科学研究センターが開発した技術をもとに醸造されたワインを、地元ワイナリーと共同で造り、販売をしています。
    これらのワインは葡萄も山梨産なら技術も山梨産なのです。
    では一体、山梨大学とコラボをしているのはどのワイナリーなのか、そしてどんなワインを造っているのでしょうか。
    紹介していきたいと思います。

    山梨ぶらん

    ワイン名
    山梨ぶらん
    ワイナリー名
    フジッコワイナリー
    品種
    甲州・セミヨン・デラウェラ
    ワインタイプ
    白ワイン
    公式サイト
    ホームページへ
    ワイナリー訪問記
    こちらから
    ワイナリーコメント
    爽快な香りと豊かな味わいが特徴の白ワインです。
    甲州、セミヨン、デラウェラの山梨県産葡萄3種で醸造しました。爽快な香りと豊かな味わいが特徴的です。
    山梨大学で実施した、ワインタンパク質とポリフェノールの相互作用による混濁除去方法およびワイン成分の変化に関する研究の成果を製品化したワインになります。

    購入はこちらから

    山梨大学樽発酵

    ワイン名
    山梨大学樽発酵
    ワイナリー名
    フジッコワイナリー
    品種
    甲州
    ワインタイプ
    白ワイン
    公式サイト
    ホームページへ
    ワイナリー訪問記
    こちらから
    ワイナリーコメント
    山梨県内で栽培された甲州種から良質なものだけ厳選し、オーク樽のなかでゆっくりと発酵させたワインです。
    豊かな香りとまろやかな味わいが特徴です。
    山梨大学で実施した、甲州種の樽内発酵とタンク内発酵におけるワイン成分の相違に関する研究の成果を製品化したワインになります。

    購入はこちらから

    山梨るーじゅ

    ワイン名
    山梨るーじゅ
    ワイナリー名
    フジッコワイナリー
    品種
    マスカットベリーA・アリカント・ブラッククイーン・カベルネ・ソーヴィニヨン・メルロー
    ワインタイプ
    赤ワイン
    公式サイト
    ホームページへ
    ワイナリー訪問記
    こちらから
    ワイナリーコメント
    葡萄の渋味、酸味、香りがやさしく溶け合い、ソフトな飲み口に仕上がりました。
    肉調理などの温かい料理などの温かい料理と良く合います。
    山梨大学で実施した、ワインタンパク質とポリフェノールの相互作用による混濁除去方法およびワイン成分の変化に関する研究の成果を製品化したワインになります。

    購入はこちらから

    山梨大学山梨メルロー

    ワイン名
    山梨大学山梨メルロー
    ワイナリー名
    シャトーメルシャン
    品種
    メルロー
    ワインタイプ
    赤ワイン
    公式サイト
    ホームページへ
    ワイナリー訪問記
    こちらから
    ワイナリーコメント
    丁寧に栽培され、適塾で収穫された城の平ヴァンヤードのメルローを醸造・樽育成して仕上げました。
    メルローの果実味豊かな味わいと樽育成によるまろやかなタンニンとがバランスよく調和し、素晴らしい味わいのワインに仕上がっています。
    勝沼・城の平試験農場の「メルロー」の特性を最大限醸し出すために、山梨大学がシャトーメルシャンと共同研究を行いました。
    そこで得た「低農薬ぶどう栽培」及び「ポリフェノール」に関する研究成果等を基に、この山梨大学ワインは、製造されています。

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    ヤマソービニオン

    ワイン名
    ヤマソービニオン
    ワイナリー名
    まるき葡萄酒
    品種
    ヤマソービニオン
    ワインタイプ
    赤ワイン
    公式サイト
    ホームページへ
    ワイナリー訪問記
    こちらから
    ワイナリーコメント
    ヤマソービニオンは、山梨大学が、御坂峠に自生している山葡萄(♀)に、ヨーロッパ系の赤ワイン用品種であるカベルネ・ソーヴィニヨン(♂)を1978年に交配し、淘汰・選別を繰り返した結果、1990年に新しい品種として種苗登録をした葡萄です。
    山ブドウの野生的なアロマを待ち合わせ、酸味や渋にまろやかさのある赤紫色の美しいワインです。

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    編集長による、【総評】

    さて最後に、編集長に山梨大学とのコラボワインに関しての感想を聞いてみたいと思います。

    編集長総評
    昔の伝統を重んじるのも良いですが、こうして最新の研究結果を反映させていくというのも大変面白いですよね。
    ロジカルに美味しいワインを造りあげたらこうなる、みたいなものをこれからバンバン出して欲しいですね!
    山梨大学の知識と醸造家の経験がコラボして生まれる山梨ワイン、今後も目を離せませんね。

    関連情報

    編集長からのお願い

    編集長

    受賞ワインをお飲みになった方々のご感想をたくさん募集しています!コメントにて教えていただければ幸いです!
    よろしくお願いいたします。_φ( ̄ー ̄ )
    山梨ワインドットノム編集部は、【自称山梨ワイナリー観光大使】を役職に【醸造家徹底応援!】を掲げ活動をしております。
    素人だからこそ感じる、ワインに対しての率直な感想を始め、ワインの基礎知識、山梨の美味しいお店などの情報を案内しています。
    情報は、記事執筆時点のものとなります。詳しくは、各ワイナリーサイトの情報をご確認下さい。
    各ワイナリーへのお問い合わせは、各ワイナリーサイト記載された方法でお問い合わせ願います。

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