山梨・ヌーボー、ボジョレー・ヌーボーが解禁し、多くの人が、ワインを日常生活の一部になることでしょう。
しかし、そこには贅沢な悩みが常につきまとうことでしょう。
それは『どのワインを飲めばいいか』ということです。これは、我々編集部も非常に悩みます。
そこで最も参考にされるのは、『ラベル』、次に『テイスティングコメント、口コミ』。そして、『醸造家コメント』でしょう。
今回我々編集部は、ワイナリーの『醸造長』に視点を向け、『リアル』の『声』を届けたいと思います。
これを知れば、ワイナリーの全貌が、『ワインの性格』がきっとわかるでしょう。
2019年11月19日、山梨ワインドットノムは牧丘町窪平にある『三養醸造』にいました。
番犬と番猫がいるのは、ワイナリーの前にいるのは三養醸造だけではないでしょうか。
人懐っこい彼らを見ると、触らずにはいられず足が自然とワイナリーに向いてしまいます。
今回は、動物にも愛される歴史豊かなワイナリー、『三養醸造』の社長兼醸造長『山田啓二』さんにインタビューをしてきました。
いつもとは違い、椅子に座り対面で向き合いながらお話をしました。
インタビューを始める前の山田さん。
午前中なので眠そう?疲れていて眠そう?笑
Contents
自己紹介
編集長:何度もお会いしているので今更だと少し恥ずかしいかもしれませんが、自己紹介をお願いできますか?
- 名前は、『山田啓二』です。「啓二」の読み方は、ニコラス・ケイジと同じです。
そして年齢は、1975年生まれの44歳です。
家族構成は、兄が1人、弟が1人の男兄弟の次男です。
出身は、山梨県です。ずっとここで育ち今に至ります。4代目です。
編集長:ありがとうございます。ワイナリーによっては、養子を迎えるワイナリーもあると聞きましたので、念のため聞いてみました。
ちなみに、昔に遡るとどれほどまでに遡りますか?
- 「山田八十八(やそはち)」が初代になります。
聞いたところによると、ワインを始めるきっかけは「ロシア」だったそうです。
彼はロシア人と戦い(日露戦争)、ロシア人からお酒をもらうときに「このお酒は葡萄から造ったんだよ」ってことを聞いたのが始まりらしいです。
当時、葡萄から作っていたのですが生食だけだったので、これを聞いて生食で使えない葡萄をお酒にしようと思ったのです。貯蔵もできますしね。
そして、自分たち用のお酒を作り続けていたのですが、1933年に正式な創業となりました。
それは軍隊に売るためです。その当時は、ワインの質ではなく潜水艦などを察知するレーダーに使われる『酒石酸』を目的に大量生産をしていたのです。
戦争後には、その流れがなくなると思いきやなくなりませんでした。日本が、物資不足だったからです。
そのため、戦争を終えたあとも大量生産の時代は続きました。
1985年がターニングポイントです。円高になり、安いワインが国内に入ってきたのです。
このタイミングから、日本のワイナリーも製法や味わいにこだわるようになってきました。
しかし、うちは家業のため転換が遅かったです。2010年ほどまで続いていました。
高品質ワインがブームではなく、定着した段階での転換をうちはしたんですね。
編集長:なるほど、今ではワインクオリティー最重要視されている『三養醸造』も実は最近だったのですね。
ちなみに、転換の指揮をとられたのは「啓二さん」ですか??
- 今私は、4代目なんですが、3代目の父親もしくは私だと思います。
ちなみに、4代目であり登記簿上の社長も私ですが、正直社長変更の手続きってお金もかかるし面倒ですよね。なので、長男の息子を提案したことがあるのです。笑
まあ、さすがにそれはしませんでしたが。笑
でも、社長っていいイメージあんまりないんですよね。なにかあれば責任を押し付けられるような。風俗店の店長のような。。。笑
せっかくならドラマであるような、名前だけの社長で悪いことできたら嬉しかった、です。笑
編集長:それはさすがに。逆に引き受けたら引き受けたで焦りますよね。笑
プライベートトーク
編集長:続きまして、啓二さんのプライベートを教えてください。
というのも、ワイナリーの人は畑を管理したりと年中無休なイメージがあります。
そのため、ストレスの発散方法などどうされているのか、教えてもらえますか。
- 高級オープンカーと言うのがインタビュアーからしたら理想かもしれないのですが、違うのです。ごめんなさい。
ワイナリーは、2人が思っている以上に精神的に追い詰められる仕事ではないです。
たしかに、醸造の時期になれば非常に忙しくなりますが2ヶ月くらいです。
ただ、他の期間は自分のペースで作業をしたりすることができます。
また、ワイナリーは大企業と呼べる会社が少ないので上司と部下といった闇の関係があまり多くないです。
それに、ワイナリーで働いている人は趣味の人が非常に多いと思っています。
だからストレスのたまりにくい職種ではあると私は思っています。
もしお金を稼ぎたいという気持ちがあるのであれば、他の職業に就けばいいことはわかっていますし。
編集長:たしかに、その通りですね。ワイナリーの人と話をしても、ワイン好きなのが非常に伝わりますね。
個人的に最も聞きたかったのですが、プライベートでもワイン飲みますか??
仕事でワインを飲みすぎて嫌いになったりしていませんか?
- 私は飲みますね。夜とかもワイナリーと地元の人で集まって飲んだりしますね。
これのいいところは、地元の人もワイナリーと直接話ができるからワインのことを深く知れる機会が多いことですよね。
東京で友人と友人の知り合いと飲んだとしても、ワイナリーの人と飲んだことないでしょう。
山梨ならではの魅力かもしれませんね。
ただもちろん、飲まない人もいますけどね。
私はビールが好きではないので、1杯目からワインです。笑
編集長:なるほど、ビール苦手なんですね。
どんなワインがプライベートでは好きですか?
- 高いワインが好きですね。笑
白ワインの好きな品種は、『リースリング』ですね。
リースリングの酸の性質と甲州の酸の性質は非常にそっくりなんです。
甲州に共通する部分があるんですね。
編集長:あえて、甲州とは言わずですね。笑
赤ワインは飲まれないんですか??
- 赤ワインは、あまり飲まないですね。
ただ、飲むとしたら『ピノ・ノワール』です。
もっと言うのであれば、ニュージーランドのセントラルオタゴのピノ・ノワールです!!
空振り空振りで1本のホームランのために買います。100打数1安打1HRを狙っているんです!!
それくらい夢のある、品種なんです。99.9%の人を失望させる力があるんです。
いわゆるひとつの、人を惹きつける力ですね、それがあるんですね。
編集長:完全に数字だけで見れば、戦力外ですね。笑
ただ、ピノ・ノワールといえば『ロマネ・コンティ』。
その1HRの価値が非常に高いんですね。飲んでみたいです。
ちなみに、先ほど高いワインが好きとおっしゃっていましたが、値段でいうとどこらへんが高いワインだと思いますか?
消費者の一般概念でいうと、3,000円以上は高いワインに入る人が多いと思いますが、
ワイン関係者が思う、さすがにこれは高い、と思う基準ってどうでしょうか。
- いい質問ですね。これは、値段判断ではあまりならないですね。
ワイナリーの人は特に試飲をして出来を知って「高い」「安い」と思う人が多いと思います。
私がすごいと思うのは、『MGVsワイナリー』です。あれは、『安すぎる』と思います。笑
ワイナリー行くと、3,500円以上がズラーッって並んでいると思います。だから、一見高いなって思う人もいると思います。
しかし、全く高くないです!味を見れば、決して高くを思わず安すぎるくらいです。
編集長:あ〜わかります、MGVsワイナリーはなにも知らずに入って見ると『高っ』と思いがちですが、全くですよね。
あの値段であのクオリティなら即決購入だと私も思いました。
ワイナリーとの出会い、ワイナリーを目指そうと思ったきっかけ
編集長:少しお話を戻してしまうのですが、先ほど先代から引き継ぎ4代目になったとおっしゃっていましたが、
引き継がない選択肢もあったと思います。そんな中、引き継いだきっかけなどあれば教えてください。
- これもインタビュワーさんを悲しませるかもしれません。笑
私個人としては、きっかけはないのです。
たしかに、ワインが好きでワイナリーに就職する人も多いと思います。
しかし、当時の私の心境としては『家業を潰すわけにはいかない』といった想いが最も強かったのです。
私の場合は、本当に数字に気持ちがついていく感じですね。新宿のキャバ嬢みたいに。笑
最初は売り上げも厳しかったのが事実ですが、家業だったゆえに自分のペースでゆっくりと方向転換できる環境にあったのがよかったと思います。
編集長:ありがとうございます。たしかに、家業と養子だと事情が違うかもしれませんね。
自分のワイナリーの特徴、そして最大の魅力
編集長:続いて、自分のワイナリーの最大の特徴を教えていただきたいです。
他のワイナリーにない、魅力ですね。
- 難しいですね。笑
過去の話で言うと、『さくらんぼ』も作っていたことがあることでしょうか。
ただ今は作っていませんが。笑
そして、『馬の蹄鉄』も作っていたことがあります。
これは創業の話ですが。笑
あとは、『お茶』も作っていました。過去に色々と作っていたことが魅力ですかね。
編集長:ありがとうございます。
過去の話もありがたいのですが、できれば現在の魅力を…笑
- やっぱり、『犬』と『猫』がいることではないでしょうか。
最近、『猫』が仲間入りしたので唄えなくなりましたが、『犬好きしか来ないワイナリー』なんです、三養醸造は。
2人からしたら衝撃かもしれませんが、過去に犬を極端にこだわる人に『近くに他のワイナリーたくさんあるから他行きなよ』と言ったことがありますからね。笑
『犬嫌い断固拒否ワイナリー』がワイナリーの魅力ですね。
最近では、犬だけではなく猫も加わりましたが。笑
編集長:啓二さんらしいですね。笑
そして、目が覚め饒舌覚醒になる直前の啓二さん。
- ワインに関しての魅力は、葡萄作りは全て自分の会社でやっていることですね。
契約農家はありません。
編集長:でも、これは非常に大切ですよね。よく他のワイナリーで〜さんが作ったなどありますが、その人を知らないのでイマイチぴんと来ないことが多いです。
もちろん、そういうワインでも美味しいのはあります。しかし、その栽培担当の人を知れば、もっと美味しくワインが味わえるのにと思ったりします。
絶対に買わなきゃ損する自分のワイナリーのワイン紹介
編集長:続いて、自分のワイナリーの商品で絶対に買わないと後悔すると思うワインはありますか??
一部、事実に基づいたフィクションになっています。
- やっぱり『窪平』です。ただ、2人が知っている「窪平」ではないんです。
というのも、実は「窪平」は廃止してしまったので。笑
よくよく考えたら、三養醸造は自社畑で葡萄を作っているわけだから、すべての葡萄が『窪平』地域で作られているので『窪平』なんです。
だから、三養醸造で作られているワインすべてが『窪平』。つまり、すべて買わないと後悔します。笑
編集長:あの窪平がないなんて。。。ちょっと衝撃です。
買いだめしておくべきでした。
オススメするワインの飲み方、自分だけのおつまみをマル秘公開
編集長:僕がこれをすごく聞きたかったのですが、オススメのワインの飲み方です。
よくワインの裏にオススメの食事の合わせ方などありますが、普段からあんなおしゃれに飲んでいる人なんていないだろうな、と勝手に思っていまして。笑
なので、ワインを造っている責任者レベルの人はどのようにしてワインを飲んでいるのかな、と。
そして誰もが知らないワインのおつまみなんかあれば、極秘で教えてもらえますと。(公開しますが。笑)
- んー今までオーソドックスな飲み方をしているので思い付かない…笑
普段は、常温でグラスにいれてガバーッと飲んでます。だから、基本的にはワイン単体ですね。
僕はしませんが、『サングリア』なんか面白いと思いますよ。
安いワインでもフルーツにつけこむと、ゴージャスになるし美味しいですね。
フルーツにもワインの味がマッチして一石二鳥です。
あとは、ガス入れるのもいいですね。
実は、『猫甲州』にガス入れたことありますが、『美味しかった』です。
華やかになりますし、ぜひやってみてほしい。
ただ、ガス入れはしっかりと作られた美味しいワインに限ると思います。
フルーツにつけこむのは、安いワインでもOKですが。笑
編集長:ありがとうございます。
つまり、『三養醸造』のワインを全種類買ってガス入れた試飲会をしよう、ということですね。笑
今後、どんなワイナリーにしていきたいか、今後、どんなワインを造っていきたいか
編集長:ラスト3つになりました、お願いします。
今後、どんなワイナリーにしていきたいか、今後、どんなワインを造っていきたいか、教えてもらえますか??
- やっぱり、鞭打って労働者を酷使するワイナリーですかね。笑
それは冗談として…難しいです。現段階で断言できることはないですが、いくつかあります。
趣味からワイン業界に入ってきた人を教育するイメージもあります。東夢ワイナリーのようなイメージです。
もしくは、自分の家柄の人間だけで小さくまとまってやるのか、など候補はいくつかあります。
ただ、日本のワインが世界に広がっている段階で後者を選択することはないと思っています。
だから、山梨で作った葡萄で造られたワインを日本中に、そして世界中に広める役割を担えるワイナリーにしたいと思っています。
それが私の儲けになりますからねえ。笑
編集長:ありがとうございます。カットせずに使いますね。
僕が修行にくるときは、受け入れてください。笑
オススメの山梨ワイナリーベスト3
編集長:これも個人的には、聞いてみたかったテーマです。
啓二さんが思う、山梨県のオススメワイナリーベスト3はどこですか。ワイナリーがワイナリーを評価する、すごく気になります。
- 普通は、ベスト3から上がっていくかも知れませんが、あえて上から。笑
やはり1番は、シャトーメルシャンでしょう。
シャトーメルシャンは、創業地の古い建物を博物館にしていて非常に興味深いです。
初心者の方からすると、『んー』って思う人も多いかも知れませんが、ワインを少しでも興味持っている人からすれば、行くと興奮するのではないでしょうか。
もちろん、それだけではありません。有料テイスティングをシャレオツなカフェでできるので、ゆっくり味わえます。工場見学もファンタスティックです。
そしてなにより、それだけの環境設備をしっかりと管理整備しているところも素晴らしいです。
山梨県のワイナリーだと、シャトーメルシャンなくして語ることはできないのではないでしょうか。
観光バスなどで考えるのであれば、2番は、シャトー勝沼ですかね。
甘口のワインが、めちゃめちゃ数多く試飲できますよね。特にワイン初心者は甘口が好きなので、最高だと思います。
それに加え、しっかりと値段も抑えられています。宝石や絵画などもありますし総合的に楽しめますよね。
レストランも併設されているのでワイナリーに求められているものが揃っていますね。
そして、3番悩みますね。互角の戦いだと正直思います。
でも、3と言えばやっぱり『三繋がり』で三養…いや『サントリー登美の丘ワイナリー』ですね。笑
素人からマニアの人までが満足できる見学はいいと思いました。食事もできるし、葡萄畑も見渡せる景色もいいですよね。
『品質維持』『ホスピタリティー』『食事ができる』
この3つが揃っているワイナリーがいいワイナリーの必須条件に近いと思っています。
三養醸造も明日からレストラン始めますかね、名付けて「三養レストラン」。そしたら、ベスト3入るかな。
明石家さんまほど、しつこくはないと思うんだけどな〜。笑
編集長:ありがとうございます。
次が最後です。
あなたにとって、ワインとは。ワイナリーとは
編集長:最後に、定番の質問です。
啓二さんにとって、『ワインとは、ワイナリーとは』なんですか??
- 本来は『人生』とか『夢』って語ってほしいと思うんですが。
そんなこと考えたことはなかったです。笑
本来は酒屋だったのですが、必要に応じて広がり今の規模になったんですね。
と語りつつ本題ですよね。
これを答えるには少し経歴の話に戻りますね。その当時流行りのニートだったんですよね。笑
かっこいい言い方をすると自宅警備員でした。笑
(高品質ワインへの転換当初は売り上げも厳しかった)
パソコンの前で1日25時間くらいカタカタしていました。笑
(表向きには『家業を潰すわけにはいかない』といった想いが強かった)
まじめなことを言うと、私にとってワイナリーとは『大空翼のドライブシュート』でしょうか。
『いつか決めるぜ、稲妻シュ~ゥト』的なものに非常に近いです。
ふざけていませんよ、あのシュートはめったに放つことのできないシュートです。
それと同じように、いつの日か『山梨の葡萄でとんでもないくらい傑出したワイン』を作りたいんです。
それが、私にとってのワイナリーです。
編集長:ありがとうございます。
非常に有意義な時間になりました。
質問を全て終えるとやりきったにも関わらず、1番元気な啓二さん。
まだあと1時間は話せそうです。笑
編集長ボイス
では、最後に醸造長について今回のインタビューの感想を聞いてみましょう。
いつも行くたびに親切にお出迎えしてくれるのですが、今回はその中でも一番面白かったです!
そして、面白おかしく話してくれつつも、やはりワイン造りに対する情熱をしっかりと感じられましたね。
話が面白いワイナリーランキングでは堂々の1位ですが、
こういった真面目なインタビューの場でも場を和ませることを忘れないというサービス精神の旺盛さに、
ある種人はこう明るくなくてはならないなと思わされた大変良い機会でした。笑
インタビュー中にテーブルに猫が乗ってくる等のハプニングもありましたが、今回は無事に三養醸造さんの、そして社長である山田啓二さんの魅力を存分に伝えられたのではないでしょうか!それでは次回の、ワイナリーインタビュー記事をお楽しみに!
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