『ミレジム』という言葉を聞いたことがありますか?
実はこのワード、ワインを楽しむ上で非常に大事なものなのです。
今回は、その『ミレジム』について分かりやすくご紹介します!
先日山梨ワインドットノムは、日比谷公園で開催された山梨ワイナリーが集結した、2019年の新酒の解禁イベント「山梨ヌーボー」に参加してきました。
読んでいない方は、こちらから読むことができます。
【2019年】山梨ヌーボー@東京 最速攻略レポート!
そして先日、山梨県ワイン酒造組合が毎年公表している「ミレジム」が決まりました。
山梨県ワイン酒造組合では、毎年の葡萄の作況を5段階で評価しています。
この葡萄の作況はワイン造りに大きく影響を及ぼします。
私たち消費者は、これを知ることで、その年のワインの出来を想像することができます。
また、同評価のヴィンテージ比較など幅広くワインを味わうこともできます。
つまり、ワインを楽しむ幅が広がります。
しかし、醸造家の苦労もそこには隠されていることを忘れてはならないでしょう。
さて本題に入る前に、繰り返し使われた「ミレジム」という言葉の意味が、気になる人も多いのではないでしょうか。
ミレジムとは、「葡萄を収穫した年」のことです、つまり私たちの身近な言葉で置き換えると『ヴィンテージ』と同義です。
では、ミレジムとヴィンテージの違い…それは言語だと思ってください。
ミレジムとは、「フランス語」、ヴィンテージとは、「英語」です。
実は他にも、「ヴェンデミーア」もあります。ちなみに、ヴェンデミーアは「イタリア語」です。
では早速気になる、「2019年」のミレジム評価は………
これを見た瞬間、少し残念な気持ちになりました。
というのも、先日参加した山梨ヌーボーで飲んだ新酒は良い仕上がりだと感じたからです。。。
しかし、この評価の理由を聞くと認めざる得ないわけがありました………
ただ、6月上旬の甲州の開花期では、降雨の影響かやや花振いを呈しました。
そして、7月から10月の成熟期に入ると、2〜4日間隔で少雨・多雨があったため、日照時間が例年以上に悪かったです。
実際に、9月5日に県内の成熟状況を調査しました。
・勝沼エリアは『11.9%~12.5%』
・穂坂エリアは『12.8%~15.4%』
・勝沼エリアは『16.4%』
・穂坂エリアは『15.4%』
このように、両品種とも糖度上昇が厳しいことが伺えます。
そして、この現状がワイン県の顔「GI Yamanashi」にまで影響を及ぼしていたのです。
山梨県産ワインの品質や評価が主に山梨県という生産地に由来することを認定し、
またワイン産地たる山梨を法律で保護することを決定したものです。
これにより、『品質の保証』『山梨のブランド力』がより高まると予想されています。
そして、以下の基準をクリアしたワインに対して、「GI Yamanashi」のロゴ表記を使うことができます。
地理的表示「山梨」生産基準
1 酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性に関する事項
(1)酒類の特性について
イ 官能的要素
山梨ワインは、甲州やマスカット・ベーリーAなどの山梨で古くから栽培されているぶどうや、ヨーロッパを原産とするヴィニフェラ種など、様々なぶどう品種について、山梨の自然環境に根付くよう品種改良や栽培方法等の工夫を行ってきたことにより、ぶどう本来の香りや味わいといった品種特性がよく顕れた、総じてやや穏やかな酸味を有するバランスの良いワインである。
その中でも甲州を原料としたワインは、口中で穏やかな味わいを感じることができ、またドライなワインはフルーティーな柑橘系の酸味を有する。
また、マスカット・ベーリーAを原料としたワインは、鮮やかな赤色の色調を有し、甘さを連想させる香りとタンニンによる穏やかな渋みを有する。
さらに、ヴィニフェラ種を原料とした白ワインは、やや穏やかな酸味とよく熟したヴィニフェラ種特有の果実の香りを有し、口に含むとボリューム感に富んでいる。ヴィニフェラ種を原料とした赤ワインは、しっかりとした色調を有し、タンニンによる十分な渋みとふくよかさのバランスが良い。
ロ 化学的要素
山梨ワインは、アルコール分、総亜硫酸値、揮発酸値及び総酸値が次の要件を満たすものをいい、発泡性を有するものも含む。
(イ) アルコール分は8.5%以上20.0%未満。ただし、補糖したものは上限値を15.0%未満とし、甘口のもの(残糖分が45g/L以上のものをいう。以下同じ。)は下限値を4.5%以上とする。
(ロ) 総亜硫酸値は250mg/L未満(甘口のものを除く。)。
(ハ) 揮発酸値は赤ワインで1.2g/L以下。白ワイン及びロゼワインで1.08 g/L以下。
(ニ) 総酸値は3.5g/L以上。
(2)酒類の特性が酒類の産地に主として帰せられることについて
イ 自然的要因
山梨県は、西側の県境を走る赤石山脈系の高山群と、南側の県境から北東に伸びる富士火山系の高山群に囲まれた山間地である。海洋の影響が少ないため、梅雨や台風の影響を受けにくく、盆地特有の気候として、日中は気温が上昇するが、朝夕は大きく気温が低下するため、1日の気温差が大きい。
この自然環境により、ぶどうの成育期においては、梅雨による多湿の影響が少なく、成熟期においても台風等による風害や日照不足を原因とする病害が発生しにくいため、ぶどうの栽培に適しており、ぶどうの着色や糖度などの品質全体に良い影響を与えている。ぶどう栽培地は、主として富士川の支流流域に沿って広がっている。多くのぶどう栽培地は、花崗岩及び安山岩の崩壊土から成る、土層が深く肥沃で排水も良好な緩傾斜にある。このような好条件を有するため、ぶどうは健全でよく熟し品種特性が良く維持されたバランスの良いワインとなる。
ロ 人的要因
山梨ワインの生産は、1870年頃から始まったといわれている。当時は、栽培されたぶどうのほとんどが生食用として消費されており、その余剰によりワインの生産が行われていた。ぶどうの栽培量が増加しても、ワインに加工し販売することができたため、農家は過剰生産を恐れずにぶどう栽培に取り組むことができ、ぶどう栽培技術の創意や改善が重ねられていった。これにあわせて、ワインの製造量も増加し、醸造技術も蓄積されていくなどの好循環が生まれ、地域の経済発展を担ってきた。
このようなワイン産業に対しては、明治時代より、政府や山梨県庁、市町村が法的整備や資金支援、品種改良に関する研究開発など様々な支援を行ってきた。現在は、県の機関として山梨県工業技術センターの中にワインセンターが設置されており、ぶどう栽培やワイン醸造の研究開発のみならず、山梨のワイン製造者に対する技術指導・支援を行っており、高品質な山梨ワインを生産する技術的基盤になっている。また、山梨大学には1947年に発酵研究所(現ワイン科学研究センター)が設置されるなど、更なる研究開発や人材育成に注力している。
日本のぶどう産地はヨーロッパのぶどう産地に比べれば降雨量が多く、山梨県もぶどうの栽培期間中に雨の影響を受けるが、山梨県のワイン事業者は、垣根栽培のぶどうに傘をかけたり、雨の跳ね返りを防ぐため垣根の高い位置でぶどうを育てるなど、様々な工夫により、品質の高いぶどう栽培を根付かせてきた。
山梨ワインは、魚介類の食事とワインを合わせた際に生臭みの原因となる物質を発生させる鉄分の量が海外で生産されるワインと比べ総じて少ない。これは、山梨県は海洋に面していない地域でありながら、寿司屋が多いなど魚介類の消費を好む傾向があり、このような地域の人々の嗜好に合うようワインの製造工程で工夫が重ねられた結果であるといえる。山梨ワインは和食等の魚介類を材料に用いた食事と相性が良く、山梨県の人々にとってワインが身近な酒類として定着してきた一つの要因といえる。
2 酒類の原料及び製法に関する事項
地理的表示「山梨」を使用するためには、次の事項を満たしている必要がある。
(1)原料
イ 果実に山梨県で収穫されたぶどう(次に掲げる品種に限る。)のみを用いたものであること。
甲州、マスカット・ベーリーA、ブラック・クイーン、ベーリー・アリカントA、デラウェア、交配品種(甲斐ノワール、甲斐ブラン、サンセミヨン、アルモノワール、ビジュノワール、モンドブリエ)、ヴィニフェラ種(シャルドネ、セミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ブラン、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、カベルネ・フラン、ピノ・ノワール、プティ・ヴェルドー、シュナン・ブラン、ピノ・グリ、ヴィオニエ、シェンブルガー、リースリング、ゲベルツトラミナー、ミュスカデ、サンソー、テンプラニーリョ、マルベック、タナ、アルバリーニョ、サンジョベーゼ、ネッビオーロ、バルベーラ、ピノ・ムニエ、ジンファンデル、ツバイゲルトレーベ、グルナッシュ、カルメネール、プティ・マンサン)
ロ 酒税法第3条第13号に規定する「果実酒」の原料を用いたものであること。ただし、同法第3条第13号ニに規定する香味料(以下単に「香味料」という。)は、ぶどうの果汁又はぶどうの濃縮果汁(いずれも山梨県で収穫されたぶどうのみを原料としたものに限る。)に限り用いることができる。
ハ 果汁糖度が、甲州種は14.0%以上、ヴィニフェラ種は18.0%以上、その他の品種は16.0%以上であるぶどうを用いること。ただし、ぶどう栽培期間の天候が不順であった場合には、当該ぶどう栽培期間を含む暦年内に収穫されたぶどうに限り、それぞれの必要果汁糖度を1.0%下げることができる。
なお、酒税法3条第13号ハに掲げる製造方法により製造するもののうち、他の容器に移し替えることなく移出することを予定した容器及び密閉できる容器等で発酵させることにより発泡性を有することとするものに用いるぶどうについては、甲州種は11.0%以上、ヴィニフェラ種は15.0%以上、その他の品種は13.0%以上であるぶどうを用いることができる。
ニ 原料として水及びアルコールを使用していないこと。ブランデー及びスピリッツについては、他の容器に移し替えることなく移出することを予定した容器で発酵させたものに、発酵後、当該容器にブランデー及びスピリッツを加える製法を行う場合に限り使用すること。
(2)製法
イ 酒税法第3条第13号に規定する「果実酒」の製造方法により、山梨県内において製造されたものであり、「果実酒等の製法品質表示基準(平成27年10月国税庁告示第18号)」第1項第3号に規定する「日本ワイン」であること。
ロ 酒税法第3条第13号ロ又はハに規定する製造方法により、糖類(酒税法3条第13号ハに掲げる糖類のうち、他の容器に移し替えることなく移出することを予定した容器及び密閉できる容器等で発酵させることにより発泡性を有することとするものに用いる糖類を除く。)を加える場合は、その加える糖類の重量が、果実に用いたぶどうの品種ごとに、それぞれ次の範囲内であること。
・ 甲州種 100ml当たり10g
・ ヴィニフェラ種85%以上 100ml当たり6g
・ その他の品種 100ml当たり8g
ハ ぶどうの収穫からワインの瓶詰を行うまでの補酸の総量が9g/L以下であること。
ニ 除酸剤については、総酸値を5g /L低減させるまで加えることができること。
ホ 製造工程上、貯蔵する場合は山梨県内で行うこと。
ヘ 山梨県内で、消費者に引き渡すことを予定した容器に詰めること。
3 酒類の特性を維持するための管理に関する事項
(1)地理的表示「山梨」を使用するためには、当該使用する酒類を酒類の製造場(酒税法(昭和28年法律第6号)第28条第6項又は第28条の3第4項の規定により酒類の製造免許を受けた製造場とみなされた場所を含む。)から移出(酒税法第28条第1項の規定の適用を受けるものを除く。)するまでに、当該使用する酒類が「酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性に関する事項」及び「酒類の原料及び製法に関する事項」を満たしていることについて、次の団体(以下「管理機関」という。)により、当該管理機関が作成する業務実施要領に基づく確認を受ける必要がある。
管理機関の名称:地理的表示「山梨」管理委員会
住所:山梨県甲府市東光寺3-13-25地場産業センター2階
山梨県ワイン酒造組合内
電話番号:055-233-7306
ウェブサイトアドレス http://www.wine.or.jp
(2)管理機関は、業務実施要領に基づき、ぶどう栽培期間の天候が不順であったと認める場合には、直ちにその旨を公表する。
4 酒類の品目に関する事項
果実酒
別紙2 備考
酒類の地理的表示に関する表示基準(平成27年国税庁告示第19号)第10項第3号の規定により、第9項の規定を適用しないものとして公示する商標その他の表示については、以下の「商標その他の表示」のとおりです。
商標その他の表示
甲州市原産地呼称ワインの認証条例(平成20年甲州市条例第34号)の規定により行う認証の表示
(注)地理的表示「山梨」の指定をした日前から使用していた上記の「商標その他の表示」に限り、地理的表示「山梨」の指定後も、引き続き表示を認めるものです。
5 統一ロゴ
地理的表示「山梨」のラベル表記は、GI Yamanashi(GI=Geographical Indicationの略)を統一ロゴとする。
上記のように、「GI Yamanashi」には厳正なる定義がありました。
しかし、2019年における「GI Yamanashi」ワインの生産基準は、葡萄の糖度を1%下げて、
『甲州が13%以上』
『マスカット・ベーリーA等15%以上』
『ヴィニフェラ種については17%以上』
とすると変更がありました。
これを聞くと、今年の葡萄栽培の困難さが伺えます。
しかし、実際に2019年も『山梨ヌーボー』を開催できたことも事実です。
これには、各ワイナリーの醸造家の弛まぬ努力があったからに違いありません。
最後に、1992年から2018年までの「ミレジム」も参考までにまとめてみました。
しかしながら、幸い甲州は収穫期まで好天に恵まれ、品質の良好な作柄となったと言えるでしょう。
山梨県内は着色期、成熟期とも少雨で日照量が多く経過して豊産。品質は平年並みと言えるでしょう。
葡萄は着果過多の傾向で推移したため、品質は平年並みの作柄と言えるでしょう。
高夜温で呼吸消耗もあったが、作柄は’02年並に非常に良好と言えるでしょう。
9月はやや多照で持ち直したが、品種により収穫期を遅らせ糖度上昇を図るほどでした。
しかし、7月中旬以降は少雨多照型の天候で推移したおかげで、収量は減じたが、品質は平年並の作柄になったと言えるでしょう。
作柄は平年並と言えるでしょう。
葡萄作柄は極めて優良と言えるでしょう。そして、ワインも極上の仕上がりになっていました。
9月も好天で作柄は良好と言えるでしょう。一部の晩熟品種を除き昨年並みの良好な仕上がりと想像できます。
しかし、9月の成熟期が多照で、夜温が冷涼であったので持ち直し、2009年並みの良好な作柄と言えるでしょう。
糖度上昇が遅々としてしまったが、9月中旬以降から10月は好天が続きました。
ただ、それでも収穫期においての糖度はやや低めで、メーカーによっては収穫時期を遅らせる配慮もしました。
その一方、ワインの香りは成熟期の冷涼が反映して良好だと言えます。
そして、マスカットベーリーAは着果量が多く推移して着色が遅延しましたが、9月中旬以降の好天で着色促進をカバーしました。
地域差はあるが、品質は平年並みと言えるでしょう。
成熟期の7月から9月上旬まで比較的高温、少雨量だったため、この段階までに収穫した葡萄は品質が良好と言えるでしょう。
しかし、9月中旬から曇雨天が続いて糖度が上昇せず、裂果、晩腐病などの発生もありました。
10月まで糖度上昇を待ったメーカーもあるほどです。
7月下旬から8月下旬は曇天続きで、特に8月中・下旬に日照不足で厳しかったですが、
9月は好天続きで日較差もあり、葡萄は健全で糖・酸も優れたバランスとなりました。
果実品質は総合して、平年作以上の作柄と言えるでしょう。
その後も適度な降水量と好天が続き7月中・下旬に色付きが始めりました。
そして、8月中・下旬。少雨、多照で糖度は上昇しましたが、9月に入ると、多雨、曇天が続き気温も低下、成熟速度が緩慢となってしまいました。
そのため、成熟期の前半の評価は星4だったが、重要なタイミングとなる後半の評価を星2と判定しました。
このように比較してみると、『星5』と評価されているヴィンテージのワインは飲まざる得ない気がしますね。
最後に、このヴィンテージチャートを見た感想を編集長に聞いて見ました。
もしかしたら、既に飲んでいる可能性もあるので、今後はこのヴィンテージチャートを頭に叩き込んで意識して飲んでいきたいと思います。
そして、我らが編集長にも『2019年ミレジムの評価』をしてもらいました。
というのも、例えば今2019年のワインと2018年のワインを比べようと思っても、2018年のワインは既に1年経ってしまったワインになるので、
どうしても完全に同じ状態のワインを比べて飲むことが出来ないんですよね。
となると、ワインを飲んでいる歴が浅い僕としては去年の2018年の新酒時点のワインの記憶を基に比較するしかない訳です。笑
なので、基準が無いという意味で星3と置かせていただきました!
今年は山梨ヌーボーをしっかりと飲んでいけるので、今年以降のミレジム評価にご期待いただきたいところです!
また、正確な評価は出来ないかもしれませんが、今後は2019年ヴィンテージのワインと他の年代のヴィンテージのワインを比較試飲してみたいですね。
こういった記事も、今後上げていくことになるかと思うので、乞うご期待を!
編集長からのお願い
編集長
また、皆さまの「ヴィンテージ評価」も集めていますので、コメントにて教えてください。
よろしくお願いいたします。_φ( ̄ー ̄ )
素人だからこそ感じる、ワインに対しての率直な感想を始め、ワインの基礎知識、山梨の美味しいお店などの情報を案内しています。
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