【ワインブームの火付け役】ポルトガルの宝石!?ポートワインとは!?

昔流行った甘いワイン?

先日、少々お年を召した方と会食する機会がありまして、ワインの話になったのですが、
「昔は甘いワインが流行っていた」というお話を聞きまして。

編集長

師匠

第一次ワインブーム前の「赤玉ポートワイン」のことかの。
世間を賑わす定期的な流行《ワインブームとは!?》
あー、たしかそんな名前でした!
そのとき気になったんですよね。ポートワインってなんだ?と笑

編集長

師匠

当時のワインがまだ全国的な文化として浸透していない日本人にとっては、
ワイン特有の渋さや酸味みたいなのが受け入れられなかったんじゃ。
国際化が一層進む東京オリンピックを迎えた昭和に入るまでは、
現サントリーの前身にあたる寿屋のヒット商品で、赤くて甘いワインである「赤玉ポートワイン」こそが日本におけるワインだったんじゃな。
そんな歴史があったのですね。。。

編集長

師匠

うむ。
当時タブーだった日本初のヌードポスターの効果もあり、赤玉ポートワインは驚異的な売上げだったようじゃな笑
ちなみに現在は原産地保護の観点から、「赤玉スイートワイン」に名称を変更しておる。


画像引用元

これは…衝撃的なポスターですね笑
今も同じようなポスターが出たら衝撃走りそうですね笑
いや…さすがに今はワイン協会や山梨県のワイナリーが反対しそうですね笑

編集長

ポートワインとは?

師匠

じゃな笑
そしてポートワインとは、シェリー酒と同じく酒精強化ワインの一種なんじゃ。
【BARで頼みたいお酒】実はスペインワイン!?シェリー酒とは!?
出ましたね、酒精強化ワイン!
ブランデーを添加してアルコール度数を強化しているワインのことでしたね。

編集長

師匠

その通りじゃ。
ポートワインの場合、アルコール発酵中にブランデーを添加することで糖分がアルコールに変換されるのを中断させるんじゃ。
だから葡萄果汁の甘みがそのまま残り、甘口ワインとなるのじゃ。
なるほど!発酵中にアルコール度数を強化して酵母を殺すということなんですね!

編集長

ポートワインはポルトガルワインの一種

師匠

うむ。
ポートワインはポルトガルのドウロ地方で造られており、
「ポルトガルの宝石」とも称される世界3大酒精強化ワインに数えられるポルトガルを代表するワインなんじゃ。
ポルトガル ポートワイン
「ポルト酒」とも言われたりしているね。
原料となる葡萄は、黒葡萄と白葡萄の両方が使われるんだ!!
選果をしたあと破砕、プレスをして直ぐに発酵させるよ。
発酵が始まると、糖分が酵母によって分解されアルコールと炭酸ガスになっていくんだ。
糖度計で発酵果汁の糖度を監視して、糖度が10度くらいまでに低下したタイミングでブランデーを添加するんだ。
ポルトガル マデイラ
辛口だけでなく、ポートワインのように甘口タイプもあるんだ。
甘口タイプの場合、ポートワインと同じように途中でブランデーを加えるよ!!
そして、「エストゥファ」と呼ばれる部屋に入れられるんだ…
徐々に温度を上げ、50~60度位で数ヶ月間、加熱による酸化熟成をするんだ♪
このワインは酸化のせいで、茶褐色に変化しているんだ。
加熱が受け入れられたきっかけは、マデイラ島の普通のワインを船で運んでいるとき、
大西洋上で船倉の温度が上がり、積まれていたワインが酸化してしまったのが始まりとされているよ。
スペイン シェリー
産地のスペインは、雨があまり降らない乾燥した気候の場所なんだ。
それに、最適な土壌のおかげで………
約25%くらいまで糖度があがるとても甘い葡萄が収穫されるんだ!!

そして、同様に選果を行い…さらに乾燥させるよ。
こうすることで、更に糖度を高めることができるからなんだ。
そして破砕、プレスしたのち、発酵させるよ!!
このとき「イエソ」と呼ばれる石膏を混ぜるんだ。これは果汁の酸度を高めて、腐りにくくするするためなんだよ!
そしてボタスという樽で貯蔵するよ♪
ここでポイントは、果汁は樽の七分目ほどまでしかいれないことだよ…
これは、フロールと呼ばれる果汁の表面に繁殖する産膜酵母の繁殖を促すためなんだ。
そして、ブランデーを添加しアルコール度が高めていくんだ。
ポートワインと違うのは、ブランデー添加のタイミングだよ!!

    「ポートワイン」
    糖分が果汁の中に残っているタイミングでブランデーを加えるよ♪

    「シェリー」
    発酵が完全に終わり、糖分が残っていない状態の果汁にブランデーを加えるよ♪

だから、シェリーは辛口になんだ♪

MEMO
イタリアのマルサラワインも含めて、世界4大酒精強化ワインと呼ばれることもあるんだよ♪
ポルトガルの宝石。。。かっこよすぎますね笑
山梨県の宝石はないんですか?笑

編集長

師匠

山梨県の宝石は水晶じゃろうな。
今から約1000年前、昇仙峡の奥地金峰山で水晶の原石が発見され………
って今聞きたいのはポートワインのことじゃろう。笑
すみません笑
なぜ、ポートワインはポルトガルで誕生したのでしょうか?

編集長

ポートワイン誕生の歴史

師匠

ここからはお主の大好きな歴史の授業じゃな笑
ポートワインの誕生には、実はイギリスが密接に関係しているんじゃよ。
なぜ…イギリスが!?

編集長

師匠

ポートワインの起源は、17世紀末なんじゃ。
イギリスとフランスが第2次百年戦争と呼ばれる植民地を巡る争いを始めた頃に遡るんじゃ。
当時のイギリスは、ボルドーをはじめとしたフランスワインへの強い需要があるにも関わらず、
敵国だったフランスのワインの輸入を禁止したんじゃ。
そのため、イギリスのワイン商はボルドーに代わるワインを探す必要があったのじゃな。
そして彼らが辿り着いたのが、ポートワインの原型となる色素や渋味の強い辛口ワインだったのじゃ。
彼らは、この辛口ワインの品質を保ったままロンドンまで輸送するために、船積み前のワインにブランデーを添加し、安定させていたんじゃな。
世界史の窓


「第2次百年戦争とは」

    1689年のウィリアム戦争から始まった、イギリスとフランスの植民地(主にアメリカ大陸とインド)における勢力拡大の争いと、ヨーロッパにおける利害の対立が結びついた戦争で、ナポレオン戦争でイギリスが勝利した1815年までをいう。 その前半は、ヨーロッパの覇権を目指すフランスのルイ14世に対して、イギリスがオーストリア・プロイセンなどと同盟して戦い、同時にアメリカ新大陸・インド植民地で利害を衝突させて戦った。この植民地における戦いは、1759年にほぼイギリスの勝利に終わったが、両国ともその戦費捻出のための増税策に対する反発から、イギリスでは植民地アメリカの独立、フランスではフランス革命でのブルボン朝の倒壊という大きな犠牲を払った。後半は、1775年からのアメリカ独立戦争、1789年のフランス革命とそれに続くナポレオン戦争という大変動のなかでの両国の対立となった。この第2次百年戦争といわれる時期のヨーロッパと植民地での両国の戦争を列挙すると次のようになる。
  • ヨーロッパに於ける戦争:ファルツ戦争/アウクスブルク同盟戦争(1688~97)、スペイン継承戦争(1701~13)、オーストリア継承戦争(1740~48)、七年戦争(1756~63)
  • 北米植民地での英仏の抗争:ウィリアム王戦争(1689~97年)、アン女王戦争(1702~13)、ジェンキンズの耳戦争(1739~44)、ジョージ王戦争(1744~48)、フレンチ=インディアン戦争 / (1755~63)
  • インドに於ける英仏の抗争:カーナティック戦争(第1次:1744~48年、第2次:50~54年、第3次:58~61年)、プラッシーの戦い(1757)
  • 1759年 イギリス軍が、アメリカ大陸・インドのいずれにおいてもフランス軍に勝利し、「奇蹟の年」と言われた。
  • アメリカ独立戦争(1778~83)……フランスはアメリカの独立を支援=フランスの参戦
  • フランス革命にたいするイギリスの干渉(1793~1802)=対仏大同盟
  • ナポレオン戦争(1803~15)=トラファルガーの海戦、ワーテルローの戦いなど なお、ナポレオン戦争後は、イギリスとフランスが戦うことはなくなり良好な関係が続いている。
「イギリスの勝利の理由」
    この一連の戦いはアメリカ独立戦争を除いて、イギリスの勝利であった。このイギリスの軍事的勝利をもたらした理由は、ウィリアム3世の1694年にイングランド銀行を設立し、国債を募集して戦費に充てるという、財政確保に成功したことがあげられる。国債に応募したのは地主や産業資本家で、またこの時は金融先進国であったオランダの資金も流れこんだ。この変革は「財政革命」とも言われ、国債という方法で資金を集め、財政を安定させることに成功し、その取り引きによって金融市場が活発となった。地主や産業資本家は自己の利益のためにイギリスの勝利と植民地拡大を期待し、国債を買うことでそれを支えた。このような資本と国家・戦争の結びつきは帝国主義を生み出すことになる。しかし、その国債の返済資金には税収が充てられたのであり、それを負担した中小農民であった。イギリスの場合は植民地への課税はその反発からアメリカ独立戦争をもたらしたが、国内では貴族の反乱や民衆蜂起は起きなかった。 一方、フランスも「財政改革」をめざしたが、それは宮廷費の節約や貴族への年金の停止と特権身分に対する課税による財源の確保であり、効率のよいものではなく、特権身分の反発から三部会が紛糾してフランス革命への引き金となってしまった。
辛口ワインにブランデーを添加するとは。。。中々強烈な味わいになりそうですね…笑

編集長

師匠

そうなんじゃよ笑
そんなとき、イギリスのワイン商が出会ったのが、ポルトガルのドウロ川沿いのシトー派修道院が造っていたワインだったのじゃ。
シトー派の修道院でも同じように、ブランデーを添加したワインを造ってたんじゃ。
しかし………イギリス人のワインとは決定的に異なる部分があったんじゃ。
それは、船積み前の完成したワインにではなく、発酵途中のワインにブランデーを添加していたんじゃな。
これによって、酵母がアルコールで殺菌され発酵が中断され、葡萄果汁の糖分が残り渋みやアルコールとバランスの取れた、
まろやかなワインに仕上がるんじゃな。
ポルトガル人…天才ですね。。。笑

編集長

師匠

イギリス人が中々のパワープレイをしていたというのもあるが笑
この手法を知ったイリギスのワイン商は彼らのワインにも応用し、今のポートワインの形となったんじゃな。
その後、ポートワインはイギリスで爆発的な人気を獲得し、
ボルドーの格付けより100年も早い1756年に世界初となる原産地統制制度を導入したんじゃ。
ワインの製法や産地の確立まで、イギリスのワイン商たちが深く関わっているのがポートワインなんじゃな。
原産地統制制度
1935年に制定されたフランスのワイン法なんだ。
目的としては、土地の個性に重きを置き、偽ワインや不正取引の防止と原産地の保護だよ!!
品種、栽培法、剪定法、醸造法などの規定が設けられており、すべての基準をクリアしないと………認められないんだ・・・
そうだったのですね!
つまり、フランスのシャンパーニュ地方で造られたスパークリングワインをシャンパンと呼ぶように、
ポルトガルのドウロ地域で、ワインの醸造過程でブランデーを添加して造られたワインのことをポートワインと呼ぶのですね!

編集長

ポートワインは3種類ある!?

師匠

そういうことじゃな!
そしてポートワインは大きく3つに分類されるんじゃよ。
2つは赤白でなんとなく分かれそうですが、3つですか?

編集長

師匠

うむ。
黒葡萄から造られている「ルビー・ポート」「タウニー・ポート」と、
白葡萄から造られている「ホワイト・ポート」の3つじゃな。
赤で2種類は読めませんでした笑

編集長

師匠

じゃろうな笑
「ルビー・ポート」は普通の赤ワインと同じく色は赤く、濃いのじゃ。
開栓後はドライワイン(普通のワイン)と同じで、大体3日以内に飲み切ることをお勧めするぞ。
それ以降は酸化により味が落ちるからの。
ルビーは赤って感じなので、普通の赤ワインと同じ感じで飲めってことですね!

編集長

師匠

次に「タウニー・ポート」じゃな。
色は赤ワインやルビー・ポートより茶色っぽく薄目なのじゃ。
特徴としては、白葡萄から造られたホワイト・ポートを混ぜて色を調整したり、
異なる収穫年のワインをブレンドして熟成年数を調整することがあるんじゃ。
(例えば5年のワインと15年のワインをブレンドすると10年の熟成年数ということになる。)
ワインをブレンドする過程で既に酸化しているから、開栓後も半年間ほどは劣化しないぞ。
紹興酒チックな香りがしそうですね!両方気になるから飲んでみたいです!

編集長

師匠

最後に「ホワイト・ポート」じゃが、タウニー・ポートの説明に出してしまったな笑
白葡萄品種から造られるポートワインで、色は黄金色で、ハチミツやナッツの香りがするんじゃ。
通常は2~3年の熟成で市場に出るが、より長く成熟されるものもあり、熟成されるほど複雑なナッツの風味になっていくぞ。
ナッツの香り。。。
これが一番気になるかもしれません笑
よし、ポートワイン、早速飲んでみようと思います!!!ありがとうございました!

編集長

師匠

ポルトガルワインであるポートワインを、山梨ワイン同様飲み比べしてみるのもまた面白いぞ!

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ワインを知るには、葡萄から♪

白ワイン用品種

甲州

甲州は、白葡萄ですが、果皮はやや紫がかったピンク色をしています。
また、甲州は果皮は厚めで、樹勢が強く、病気に強いです。
日本の気候とは相性が良く、あまり病気にならずに甲州を育てることができます。
糖度は上がりにくく、穏やかな味わいのワインになります。
味わいは穏やかなものもあれば、軽やかでスッキリとした味わいであるワインも多いです。
そして、後味に少し苦味・渋味が残るのが甲州の特徴です。
最近では、「シュール・リー製法」の甲州ワインが人気です。スッキリした辛口の甲州ワインです。
他にも樽で熟成した厚みのあるタイプや、早く収穫することで柑橘系の香りが強いタイプ、果皮と一緒に仕込み複雑さをだしたグリタイプ、などがあります。

注意
甲州と樽は相性が良いとは言えません…長い間の樽熟成は、甲州の香りや味がほとんどなくなってしまいます。

シャルドネ

小さめの房と薄めの果皮の小粒の実が特徴です。世界各国で栽培されている葡萄品種の1つです。
元々葡萄品種としては個性が弱く、あまり特徴のないぶどうです。
そのため、栽培環境や醸造家の技術などがストレートに反映されやすいです。
スッキリとしたタイプのワインもあれば、コクのある飲みごたえ抜群のタイプまで、幅広く再現されています。
オリジナルな特徴は弱いですが、「果実感」「酸味」などの点では、非常に高いスペックを有しています。

セミヨン

大きめの房と粒が特徴です。また、安定した収量も魅力の1つです。
特徴的な香りがないこと、そして落ち着いた果実味、重圧感などもセミヨンの特徴です。
熟成能力が高い葡萄で、長ければ長いほどコクがある味わいを感じれます。
また、貴腐葡萄になると、世界最高峰の甘口ワインの原料になります。

赤ワイン用品種

マスカットベーリーA

房と粒は大きく、皮は薄めの葡萄品種です。
ワインの色調は薄くなりがちです。しかし、しっかりと熟成をさせれば色はでます。
イチゴキャンディーのような甘い香りマスカットベーリーAの最大の特徴です。
新鮮な果実味と、鋭い酸味、軽いタンニンが特徴で、フルーティーなワインが造られます。

マスカットベーリーAの生い立ち

『日本のワインの父』と呼ばれる「川上善兵衛」
川上は、フランスから帰国した土屋竜憲に葡萄の栽培技術を学び、岩の原葡萄園を開設。
そこで、気候風土に適した葡萄を求め品種改良に挑みました。
約1万310回の品種交雑をおこなった結果、優良22品種を世に産みました。
その中で最も有名な品種が『マスカット・ベーリーA』です。
今日において、マスカットベーリーAは、甲州と並び、山梨ワインを象徴する葡萄品種の1つです。
2013年にはOIV(国際ブドウ・ワイン機構)に品種登録されました。

カベルネ・ソーヴィニヨン

小粒と分厚い皮と大きな種が特徴の葡萄です。
ワインにすると色が濃く、強い渋味を持ちます。そのため、骨格のある味わいに仕上がります。
世界中のどこで作っても品質の高いワインが生まれると言われています。
だから、世界で最も栽培されるワイン用葡萄として有名です。
カシスなどを思わせる果実味と、ミントのような清涼感のある香りがあります。
また、酸もタンニンも強めで、ガッチリとしたワインです。

メルロー

ミディアムサイズの粒と比較的大きめの房が特徴です。
早熟で糖度が上がりやすいため、果実味を強く感じやすいです。樹勢が強く、病気にも強いです。
さらに、産地をあまり選ばないため、世界中で人気がある葡萄品種です。
プラムやブラックチェリーなどの果実香が特徴です。
酸度は比較的弱く、果実感は強い、そしてやわらかなタンニンなどが特徴の葡萄品種です。

最近耳にする、「山梨ワイン」。
実は、山梨ワインには決まりがあったのです。
山梨ワインの定義をご紹介♪

国税庁

地理的表示「山梨」生産基準
1 酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性に関する事項
(1)酒類の特性について
イ 官能的要素
山梨ワインは、甲州やマスカット・ベーリーAなどの山梨で古くから栽培されているぶどうや、ヨーロッパを原産とするヴィニフェラ種など、様々なぶどう品種について、山梨の自然環境に根付くよう品種改良や栽培方法等の工夫を行ってきたことにより、ぶどう本来の香りや味わいといった品種特性がよく顕れた、総じてやや穏やかな酸味を有するバランスの良いワインである。
その中でも甲州を原料としたワインは、口中で穏やかな味わいを感じることができ、またドライなワインはフルーティーな柑橘系の酸味を有する。
また、マスカット・ベーリーAを原料としたワインは、鮮やかな赤色の色調を有し、甘さを連想させる香りとタンニンによる穏やかな渋みを有する。
さらに、ヴィニフェラ種を原料とした白ワインは、やや穏やかな酸味とよく熟したヴィニフェラ種特有の果実の香りを有し、口に含むとボリューム感に富んでいる。ヴィニフェラ種を原料とした赤ワインは、しっかりとした色調を有し、タンニンによる十分な渋みとふくよかさのバランスが良い。

ロ 化学的要素
山梨ワインは、アルコール分、総亜硫酸値、揮発酸値及び総酸値が次の要件を満たすものをいい、発泡性を有するものも含む。
(イ) アルコール分は8.5%以上20.0%未満。ただし、補糖したものは上限値を15.0%未満とし、甘口のもの(残糖分が45g/L以上のものをいう。以下同じ。)は下限値を4.5%以上とする。
(ロ) 総亜硫酸値は250mg/L未満(甘口のものを除く。)。
(ハ) 揮発酸値は赤ワインで1.2g/L以下。白ワイン及びロゼワインで1.08 g/L以下。
(ニ) 総酸値は3.5g/L以上。

(2)酒類の特性が酒類の産地に主として帰せられることについて
イ 自然的要因
山梨県は、西側の県境を走る赤石山脈系の高山群と、南側の県境から北東に伸びる富士火山系の高山群に囲まれた山間地である。海洋の影響が少ないため、梅雨や台風の影響を受けにくく、盆地特有の気候として、日中は気温が上昇するが、朝夕は大きく気温が低下するため、1日の気温差が大きい。
この自然環境により、ぶどうの成育期においては、梅雨による多湿の影響が少なく、成熟期においても台風等による風害や日照不足を原因とする病害が発生しにくいため、ぶどうの栽培に適しており、ぶどうの着色や糖度などの品質全体に良い影響を与えている。ぶどう栽培地は、主として富士川の支流流域に沿って広がっている。多くのぶどう栽培地は、花崗岩及び安山岩の崩壊土から成る、土層が深く肥沃で排水も良好な緩傾斜にある。このような好条件を有するため、ぶどうは健全でよく熟し品種特性が良く維持されたバランスの良いワインとなる。

ロ 人的要因
山梨ワインの生産は、1870年頃から始まったといわれている。当時は、栽培されたぶどうのほとんどが生食用として消費されており、その余剰によりワインの生産が行われていた。ぶどうの栽培量が増加しても、ワインに加工し販売することができたため、農家は過剰生産を恐れずにぶどう栽培に取り組むことができ、ぶどう栽培技術の創意や改善が重ねられていった。これにあわせて、ワインの製造量も増加し、醸造技術も蓄積されていくなどの好循環が生まれ、地域の経済発展を担ってきた。
このようなワイン産業に対しては、明治時代より、政府や山梨県庁、市町村が法的整備や資金支援、品種改良に関する研究開発など様々な支援を行ってきた。現在は、県の機関として山梨県工業技術センターの中にワインセンターが設置されており、ぶどう栽培やワイン醸造の研究開発のみならず、山梨のワイン製造者に対する技術指導・支援を行っており、高品質な山梨ワインを生産する技術的基盤になっている。また、山梨大学には1947年に発酵研究所(現ワイン科学研究センター)が設置されるなど、更なる研究開発や人材育成に注力している。
日本のぶどう産地はヨーロッパのぶどう産地に比べれば降雨量が多く、山梨県もぶどうの栽培期間中に雨の影響を受けるが、山梨県のワイン事業者は、垣根栽培のぶどうに傘をかけたり、雨の跳ね返りを防ぐため垣根の高い位置でぶどうを育てるなど、様々な工夫により、品質の高いぶどう栽培を根付かせてきた。
山梨ワインは、魚介類の食事とワインを合わせた際に生臭みの原因となる物質を発生させる鉄分の量が海外で生産されるワインと比べ総じて少ない。これは、山梨県は海洋に面していない地域でありながら、寿司屋が多いなど魚介類の消費を好む傾向があり、このような地域の人々の嗜好に合うようワインの製造工程で工夫が重ねられた結果であるといえる。山梨ワインは和食等の魚介類を材料に用いた食事と相性が良く、山梨県の人々にとってワインが身近な酒類として定着してきた一つの要因といえる。

2 酒類の原料及び製法に関する事項
地理的表示「山梨」を使用するためには、次の事項を満たしている必要がある。
(1)原料
イ 果実に山梨県で収穫されたぶどう(次に掲げる品種に限る。)のみを用いたものであること。
甲州、マスカット・ベーリーA、ブラック・クイーン、ベーリー・アリカントA、デラウェア、交配品種(甲斐ノワール、甲斐ブラン、サンセミヨン、アルモノワール、ビジュノワール、モンドブリエ)、ヴィニフェラ種(シャルドネ、セミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ブラン、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、カベルネ・フラン、ピノ・ノワール、プティ・ヴェルドー、シュナン・ブラン、ピノ・グリ、ヴィオニエ、シェンブルガー、リースリング、ゲベルツトラミナー、ミュスカデ、サンソー、テンプラニーリョ、マルベック、タナ、アルバリーニョ、サンジョベーゼ、ネッビオーロ、バルベーラ、ピノ・ムニエ、ジンファンデル、ツバイゲルトレーベ、グルナッシュ、カルメネール、プティ・マンサン)

ロ 酒税法第3条第13号に規定する「果実酒」の原料を用いたものであること。ただし、同法第3条第13号ニに規定する香味料(以下単に「香味料」という。)は、ぶどうの果汁又はぶどうの濃縮果汁(いずれも山梨県で収穫されたぶどうのみを原料としたものに限る。)に限り用いることができる。

ハ 果汁糖度が、甲州種は14.0%以上、ヴィニフェラ種は18.0%以上、その他の品種は16.0%以上であるぶどうを用いること。ただし、ぶどう栽培期間の天候が不順であった場合には、当該ぶどう栽培期間を含む暦年内に収穫されたぶどうに限り、それぞれの必要果汁糖度を1.0%下げることができる。
なお、酒税法3条第13号ハに掲げる製造方法により製造するもののうち、他の容器に移し替えることなく移出することを予定した容器及び密閉できる容器等で発酵させることにより発泡性を有することとするものに用いるぶどうについては、甲州種は11.0%以上、ヴィニフェラ種は15.0%以上、その他の品種は13.0%以上であるぶどうを用いることができる。

ニ 原料として水及びアルコールを使用していないこと。ブランデー及びスピリッツについては、他の容器に移し替えることなく移出することを予定した容器で発酵させたものに、発酵後、当該容器にブランデー及びスピリッツを加える製法を行う場合に限り使用すること。

(2)製法
イ 酒税法第3条第13号に規定する「果実酒」の製造方法により、山梨県内において製造されたものであり、「果実酒等の製法品質表示基準(平成27年10月国税庁告示第18号)」第1項第3号に規定する「日本ワイン」であること。
ロ 酒税法第3条第13号ロ又はハに規定する製造方法により、糖類(酒税法3条第13号ハに掲げる糖類のうち、他の容器に移し替えることなく移出することを予定した容器及び密閉できる容器等で発酵させることにより発泡性を有することとするものに用いる糖類を除く。)を加える場合は、その加える糖類の重量が、果実に用いたぶどうの品種ごとに、それぞれ次の範囲内であること。
・ 甲州種 100ml当たり10g
・ ヴィニフェラ種85%以上 100ml当たり6g
・ その他の品種 100ml当たり8g
ハ ぶどうの収穫からワインの瓶詰を行うまでの補酸の総量が9g/L以下であること。
ニ 除酸剤については、総酸値を5g /L低減させるまで加えることができること。
ホ 製造工程上、貯蔵する場合は山梨県内で行うこと。
ヘ 山梨県内で、消費者に引き渡すことを予定した容器に詰めること。

3 酒類の特性を維持するための管理に関する事項
(1)地理的表示「山梨」を使用するためには、当該使用する酒類を酒類の製造場(酒税法(昭和28年法律第6号)第28条第6項又は第28条の3第4項の規定により酒類の製造免許を受けた製造場とみなされた場所を含む。)から移出(酒税法第28条第1項の規定の適用を受けるものを除く。)するまでに、当該使用する酒類が「酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性に関する事項」及び「酒類の原料及び製法に関する事項」を満たしていることについて、次の団体(以下「管理機関」という。)により、当該管理機関が作成する業務実施要領に基づく確認を受ける必要がある。
管理機関の名称:地理的表示「山梨」管理委員会
住所:山梨県甲府市東光寺3-13-25地場産業センター2階
山梨県ワイン酒造組合内
電話番号:055-233-7306
ウェブサイトアドレス http://www.wine.or.jp
(2)管理機関は、業務実施要領に基づき、ぶどう栽培期間の天候が不順であったと認める場合には、直ちにその旨を公表する。

4 酒類の品目に関する事項
果実酒

別紙2 備考
酒類の地理的表示に関する表示基準(平成27年国税庁告示第19号)第10項第3号の規定により、第9項の規定を適用しないものとして公示する商標その他の表示については、以下の「商標その他の表示」のとおりです。
商標その他の表示
甲州市原産地呼称ワインの認証条例(平成20年甲州市条例第34号)の規定により行う認証の表示
(注)地理的表示「山梨」の指定をした日前から使用していた上記の「商標その他の表示」に限り、地理的表示「山梨」の指定後も、引き続き表示を認めるものです。

5 統一ロゴ
地理的表示「山梨」のラベル表記は、GI Yamanashi(GI=Geographical Indicationの略)を統一ロゴとする。
山梨ワインドットノム編集部は、【自称山梨ワイナリー観光大使】を役職に【醸造家徹底応援!】を掲げ活動をしております。素人だからこそ感じる、ワインに対しての率直な感想を始め、ワインの基礎知識、山梨の美味しいお店などの情報を案内します。情報は、記事執筆時点のものとなります。詳しくは、各ワイナリーサイトの情報をご確認下さい。各ワイナリーへのお問い合わせは、各ワイナリーサイト記載された方法でお問い合わせ願います。

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